朝から仕事が忙しくて、建築事務所ではまるで時が経つのを忘れるような一日だった。プロジェクトの締切が近づくとどうしても張り詰めた空気になる。藤原も今日ばかりは無言でPCとにらめっこしていた。
外を見ると、街路樹の紅葉が美しく染まり、秋の訪れを全身で感じさせる。オフィスの窓越しに差し込む夕日の光が紅葉に映えて、少しの間だけでも心が和んだ。そういえば、昨夜ニュースで「今年の紅葉は例年より鮮やか」と特集されていたのを思い出す。街のあちこちが赤や黄色に彩られ、日常の中に小さな芸術が広がっている感じがした。
今日は何といっても、「ドラクエⅢリメイク」の発売日だった。SNSでは、プレイした人たちが美しいグラフィックや新しい機能について興奮気味に投稿しているのを見かけた。高校時代、弟と一緒にオリジナル版を遊び倒した思い出がよみがえる。あの頃は寝食を忘れてロトの勇者となり、世界を冒険したっけ。
しかし、現実はそんな感傷に浸る暇もなく、仕事に追われる日々。今日は残業を終えて家に帰ると、ソファに腰を下ろした瞬間に深い眠りに吸い込まれてしまった。目が覚めた時にはすでに夜中を回っており、部屋は静まり返っている。
「ドラクエⅢをプレイしたいけど、時間がないな…」とつぶやきながら、スマホでいくつかのレビューを読みつつ少し悔しい気持ちになった。でも、週末こそは本当に久しぶりにゲームの時間を取りたい。頭の中ではすでにパーティを組んで冒険の第一歩を踏み出している自分がいる。
外を見ると、夜風に揺れる紅葉が月明かりに照らされて、昼間とは違った美しさを見せていた。「明日もまた忙しいだろうけど、この小さな秋の瞬間を大切にしよう」と心に決め、寝室へと向かった。